EN / JA
観泉寺:東京23区に、京都のような額縁紅葉が無料で
東京

観泉寺:東京23区に、京都のような額縁紅葉が無料で

紅葉を見るならどこか——その答えは、たいてい決まっています。京都へ行って、何百万人かと一緒に、並ぶ。

けれど東京の、ごくふつうの住宅街に、山門に立って向こうを覗くと、紅葉と本堂がまるで誰かが構図を決めてくれたかのように収まって見えるお寺があります。観泉寺(かんせんじ)拝観は無料。そして11月下旬の平日の朝なら、境内をひとりで歩けることさえあります。

額縁紅葉

日本語には、この効果を指す言葉があります。額縁紅葉(がくぶちもみじ)——暗い山門が額縁になって、その向こうの色を切り取る、あの見え方です。

観泉寺は、東京でも指折りの一枚を見せてくれます。山門の下に立つと、重い木組みと瓦屋根が、燃えるような紅葉と本堂を四角く囲みます。枠は暗く、絵は明るい。ほとんど、シャッターを押すだけで写真になります。

観泉寺の山門が切り取る、紅葉と本堂

くぐって進むと、庭が開けます。刈り込まれた松、曲線を描く芝、石灯籠——池泉観賞式庭園。京都や奈良まで出かけて見るような景色です。ここが東京23区の中だとは、正直、信じがたい。

青空と紅葉を背にした石灯籠

紅葉と松のあいだの園路と、その奥の本堂

そして銀杏(いちょう)も色づきます。もみじより少し遅く、そしてずっと黄色く。

本堂の屋根の上に広がる、黄金色の大銀杏

いつ行くか

  • 紅葉の見頃:11月下旬〜12月上旬。 季節というより「二週間」です。出かける前に必ず確認を。
  • 初夏もいい時期です。もみじの新緑、そして涼しい竹林の小径があります。
  • そのあいだの、静かな朝も、正直おすすめです。現役のお寺に、とても良い庭がある——それだけで十分な理由になります。

11月下旬には近年、夜間のライトアップ(無料)も行われています。日程は毎年発表されますので、その都度ご確認ください。

墓地に眠る、負けた大名

ここからが、多くの人が驚くところです。

このお寺は、戦国の名門今川家の菩提寺。そして開基として眠るのが、今川氏真(うじざね)です。

父は今川義元1560年(永禄3年)、誰もが勝つと思っていた大軍を率いて上洛の途につき、桶狭間の戦いで、はるかに寡兵の若き織田信長に討たれました。日本史でもっとも有名な番狂わせのひとつです。氏真は残されたものを継ぎ、そして失いました。駿河は武田と北条に、遠江は若き徳川家康に。

けれど彼は、戦で死にませんでした。長く生き、その子孫は徳川幕府に仕え、宮中の礼式を司る家として続きます。1597年(慶長2年)にこの寺が開かれ、十三代・今川直房が今川家の菩提寺と定めて、観泉寺と名づけました。

そして素敵な事実がひとつ。このあたりの町名は「今川」です。今川家がこの土地に名を遺し、その名は今も、通りの表示にもバス停にも残っています。

行き方

観光ルートの上にはありません。だからこそ静かなのです。

  • 上井草駅(西武新宿線)から徒歩約14分
  • 西荻窪駅(JR中央線)から約2km、またはバス
  • バスなら西荻窪・荻窪から、「今川二丁目」「農芸高校」「中央大学杉並高校」下車、徒歩2〜3分

西武線で行かれるなら、同じ日に上井草駅の撮り鉄スポット朝6時から開くサンドイッチ店カリーナも回れます。朝ごはんを買って、電車を眺めて、それから寺まで歩く。

静かにお参りください

観泉寺は、墓地を持つ現役の曹洞宗の寺院です。観光施設ではありません。拝観が無料なのは、商売ではないからです。

声をひそめて、園路を歩き、掲示に従って、堂内やお墓は撮影しない。そういう気持ちで訪れるなら、ここは東京でもっとも気前のいい一時間になります。

基本情報

  • 名称: 宝珠山 観泉寺(曹洞宗)
  • 所在地: 東京都杉並区今川2-16-1
  • 拝観料: 無料
  • 境内: おおむね6:40〜16:30
  • 紅葉の見頃: 11月下旬〜12月上旬
  • 最寄り駅: 上井草駅(西武新宿線)徒歩約14分
  • 創建: 1597年(慶長2年)/今川家の菩提寺

色を、持ち帰る

もみじが目当てで訪れたのなら、知っておくと良いものが二つあります。

写真家水野克比古は、京都の庭を撮り続けてきた人です。その紅葉の一冊『京都の意匠 紅葉』は、本としても美しく、そして日英併記という嬉しい作りになっています。

→ この本については別に書きました:京都の紅葉を144ページに:『京都の意匠 紅葉』

もみじを、育てる

もうひとつ。出猩々(でしょうじょう)もみじの小品盆栽です。春の芽出しが燃えるように赤くなる品種で、苔付き。額縁紅葉を年中、机の上に置いておけます。

小品盆栽 出猩々(でしょうじょう)もみじ 苔付き(鉢が選べます)

小品盆栽 出猩々もみじ(苔付き)を楽天で見る

価格・在庫は変動します(執筆時点で3,780円)。Amazonには同じ商品がないため、楽天のみのご案内です。

(※ 価格・在庫は変動します。表示は掲載時点のものです。)

こんな方へ

京都の紅葉を、京都の人混みなしで見たい方へ。11月下旬、東京の西側に滞在していて、朝が空いている方へ。そして——敗れた大名の菩提寺が、いつのまにか町でいちばん美しい庭になっていて、しかも無料で入れてくれる。そういう話が好きな方へ。

注記:拝観時間・ライトアップ日程・見頃は年により変わります。観泉寺はまず信仰の場です。敬意をもってお参りください。

アフィリエイト情報:この記事にはAmazonアソシエイトおよび楽天市場のアフィリエイトリンクが含まれています。リンク経由のご購入は、追加費用なしでこのブログを支援することになります。