飛騨春慶塗:木目が透けて見える、使うための漆器
「漆器」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、艶やかな黒。美術館のケースの向こうにあって、食事に使うのは少し気が引ける——そんな存在かもしれません。
飛騨春慶(ひだしゅんけい)は、その穏やかな例外です。そして、持ち帰るならこれを、とおすすめしたい漆器でもあります。
木目を「隠さない」漆
漆器のほとんどは、不透明です。黒や朱を塗り重ねて、下の木を完全に覆い、表面を鏡のように仕上げます。
飛騨春慶は、逆をいきます。木地を整え、うっすらと色をつけ、そこに透き漆(すきうるし)をかける。すると漆は木目を隠すのではなく、内側にしみ込んで、木目を引き立てるのです。仕上がりは、澄んだあたたかい飴色。その下を、木が育った跡がそのまま走っています。同じ木は二つとないので、同じ器も二つとありません。
この技法が生まれたのは、岐阜の山あい・高山。江戸のごく初期、1600年代の初めのことで、今もその地で作られています。国の伝統的工芸品にも指定されています。
持っていると、実は嬉しい理由
漆器には、見落とされがちな実用の美点があります。
- とても軽い。 陶器の器のあとに持ち上げると、驚くほどです。
- 熱を伝えにくい。 熱い汁物を、手のひらで包んで持てる。日本の汁物が椀で供され、スプーンでなく口をつけて飲むのは、まさにこのためです。
- 手ざわりがあたたかく、食卓に置く音も静かです。
- 鞄のなかで割れない。 木は砕けません。日本から持ち帰る美しいもののなかで、いちばん心配の少ないもののひとつです。
つくり手
おすすめしたいのは、山田平安堂の器です。1919年(大正8年)に日本橋で創業し、現在は代官山に本店を構える漆器専門店。宮内庁御用達として知られ、外務省や各国大使館にも納めています。
このボウルは21cm。サラダにも、果物にも、麺にも——あるいは何も入れずに食卓へ置いておくのにも、ちょうどいい大きさです。
同じ春慶塗でも、盛鉢という選択肢もあります。八角にかたどった鉢に、菊紋を入れたもの。飛騨高山の工房が、叙勲や褒章の記念品として扱っている品です。果物を盛っても、菓子を置いても、何も入れずに棚へ置いても、木目の飴色がよく映えます。
ひとつだけ、正直に
漆器は、少しだけ手をかけてほしい器です。買ったあとに知るより、先に知っておいてください。
- 手洗いで。 ぬるま湯とやわらかい布で、やさしく。食洗機は避けてください。
- 直射日光を避け、長時間の水漬けもしないこと。
- 電子レンジ・オーブンは不可。
どれも難しいことではありません。良い木のまな板に払う程度の気づかいです。ただ、食器はすべて食洗機、というご家庭であれば、この器は向きません。あとで困るより、先にお伝えしておきます。
この器と出会った場所
山田平安堂の仕事を見に行ったのは、皇居 新年一般参賀の記事を書いていたときでした。同じつくり手が、皇室の菓子器ボンボニエールも手がけています。こちらは美しい品ですが、食器ではなく記念の器です。
こんな方へ
飾って終わりではなく、毎日の暮らしに入っていくお土産をお探しの方へ。軽くて、旅に強くて、漆器としては思ったより手が届く。そして手に取るたびに、岐阜の山で育った木の目が、仕上げの下にちゃんと残っているのが見えます。
注記:価格・在庫は変わることがあります。ご注文前に最新の商品ページをご確認ください。
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