豊洲市場のマグロせり見学:無料の抽選に申し込む方法と、外れたときの手
夜明け前、小さな空港ほどもある広間の緑の床に、千本近いマグロが並びます。5時半、鐘が鳴る。5社のせり人が一斉に、ほかのどこにもない独特の節で声を張り、買い手は指先の動きだけで応える。数分のうちに、車より高い魚が次々と動いていきます。
この真横に立てるのは、1日100人だけ。ガラス越しではなく、せり場と同じ高さのデッキから見ます。費用は無料。ただし、ふらりと行って入れる場所ではありません。前の月にインターネットで申し込み、抽選に当たる必要があります。
その仕組みを、順を追って説明します。ここでつまずく人がとても多いからです。そして、外れたときのための道も、最後に書いておきます。

マグロのせりの見方は2つある
豊洲市場でいちばん混乱しやすいところなので、先に整理します。
| マグロせり見学デッキ | 見学者通路 | |
|---|---|---|
| 申込 | 前月に抽選申込 | 不要 |
| 費用 | 無料 | 無料 |
| 場所 | せり場と同じ階・すぐ横 | 一つ上の階・ガラス越し |
| 時間 | 5:45〜6:25 | 市場は5:00から入れる |
| 人数 | 各日100人 | 制限なし |
どちらも無料です。抽選が必要なのは「デッキ」のほう。上の見学者通路はいつでも開いていて、申込も要らず、これはこれで十分に見ごたえがあります。
デッキの申し込み(抽選)
申込は専用サイトから。英語版もあります。
流れは月ごとです。だいたい月の初めに翌月分の受付が始まり、1週間ほどで締め切り、そこから1週間ほどで結果発表。たとえば2026年9月分は、受付が8月5日〜12日、結果発表が8月20日でした。
申し込む前に知っておきたいこと。
- 抽選です。先着ではありません。 受付開始と同時に申し込んでも有利にはなりません
- 1グループ1口。 同行者は4名まで(合計5名)登録でき、0歳の赤ちゃんも人数に数えられます
- 1つのメールアドレスから複数申込は不可。 代表者名やアドレスを変えた同一グループの重複申込も禁止です
- 第3希望まで書けますが、当たるのは1日だけ
- 代表者は中学生以上
- 自分で決めた「申込状況照会用パスワード」は必ず控えておく。結果確認に使います
当選者にしかメールは届きません。 しかも再送はされません。迷惑メールに紛れることもあるので、発表日に自分でサイトの照会画面を開いて確認するのが確実です。
当日の流れ
集合は朝5時30分、場所は7街区 管理施設棟3階の「PRコーナー」。市場前駅から歩行者デッキを渡り、管理施設棟3階の入口から右手にまっすぐ進んだ先です。
同行者を含む全員分、2つを忘れずに。
- 当選が確認できるもの(画面でも紙でも可)
- 顔写真付きの身分証(運転免許証・パスポート・学生証など)。小学生以下で顔写真付きの証明がない場合は保険証で可
本人確認は全員に対して行われます。形式的なものではなく、見学権の転売を防ぐための措置で、確認できなければ見学できません。PRコーナーから組ごとにデッキへ移動するので、遅れるとそのまま参加できなくなります。
デッキでは5:45〜6:25のあいだ、組ごとに順番に見学します。写真撮影は可、フラッシュは禁止。泥酔している人は入れません。
いちばんの難関は「行き方」
ここが本当に落とし穴なので、先にお伝えします。
ゆりかもめの始発では、5時30分の集合に間に合いません。 新橋発の最初の便は5時45分前後——集合時刻を過ぎています。始発を当てにした計画は立てないでください。
現実的な選択肢は3つ。
- タクシー。 いちばん確実で、当選者の多くが結局これになります。都心から20〜30分をみておく
- 有楽町線の豊洲駅から徒歩20分ほど。 各線の始発を確認し、余裕をもって
- 市場のそばに前泊する。 徒歩数分のホテルがあります。5時半集合なら、これは贅沢ではなく「落ち着いていられる選択」です

市場は広く、見学者用の入口はぱっと見でわかりません。 出発前に必ず地図を見て、スマホに保存しておいてください。暗いなか、案内表示が視界にない状態では「駅の隣の建物」だけでは足りません。見学ルートには係員がいて、英語で案内できる人もいます。
ここは「観光地」ではなく「職場」です
豊洲市場は、見学者のために開いている施設ではありません。東京の魚の多くをさばく卸売市場であり、目の前の人たちは1日でいちばん忙しい30分のさなかにいます。見学が無料なのは、商売ではないからです。
その前提を、そのまま行動に移してください。
- 声をひそめる。 とくにデッキでは。せり人も買い手も、数字を耳で追っています
- フラッシュ禁止。 魚を見極めている人の邪魔になります
- 誘導員の指示に従う。 ほかの見学者の迷惑になる行為があれば、デッキから退場になります
- 見学ルートから出ない。 1階の卸売場は見学者立入禁止で、入口は警備員が固めています。入れるのは買い出しの人だけ。意地悪ではなく、ターレの行き交う場所に見物人がいるのは本当に危ないからです
- 通路・ベンチでの飲食は禁止。 見学者が使える喫煙所もありません
市場は、この見学を自らの判断で開いています。閉じるのも同じくらい簡単で、実際にそうした市場もあります。開いたままでいられるよう、力を貸してください。
外れたら
朝の予定を取り消す必要はありません。一つ上の階の「見学者通路」は、申込不要です。
市場は5時に開きます。通路からは大物売場の緑の床を見下ろすことができ、5時半から6時半のあいだはせり場の音声が中継されます。開始を告げる鐘、せり人の掛け声——1時間まるごと。正直に書くと、通路から生鮮マグロのせりは見えにくいです。よく見えるのは冷凍マグロのせりのほうで、こちらは生鮮の約200本に対して約1000本と、数のうえでは主役です。
通路には、買い手が値を示す「手やり」の解説板や、江戸時代からの市場の歴史のパネルがあります。築地に入荷した過去最大のクロマグロの実物大オブジェもあり、ここは市場でいちばん写真を撮られている場所です。
そのあとは6街区へ。ターレの実物2台が展示してあり、屋上緑化広場にも上がれます。晴れた朝なら富士山が見えます。

もうひとつ、案内してもらうという手もあります。豊洲と築地をまとめて回り、せりの見学と場外での海鮮の朝ごはんが付いたツアーです。抽選のデッキとは別のもので、デッキに入れるわけではありませんが、暗いうちに知らない市場を歩く不安がなくなるのは、それだけで価値があります。
ツアーのページに載っている写真は、市場の隣にある豊洲千客万来です。店が開くのはおおむね10時から(2階には9時開店の店もあります)。朝5時のせり見学の時間帯ではなく、そのあとの時間の様子です。
持ち帰れるもの
せりは40分で終わり、撮影できる範囲も限られています。手元に残しにくい場所です。その例外を、ひとつだけ。
豊洲が開いたのは2018年。築地の場内市場が83年の歴史を閉じた年です。『築地市場の人々 最後の二年間を撮る』は、写真家山下倫一さんが、築地最後の二年間を撮り続けた大判の写真集(国書刊行会・2022年/A4判・184ページ)。
魚ではなく、そこにいた人を撮っています。せり人、仲卸、鉤を持つ手。豊洲のデッキに立ったあとで見ると、そこに写っているのは同じ顔だとわかります。
→ この写真集については、別記事でもう少し詳しく書きました。
基本情報
- 名称: 東京都中央卸売市場 豊洲市場
- 住所: 東京都江東区豊洲6-6-1
- 最寄駅: ゆりかもめ「市場前駅」徒歩約5分
- 開場時間: 5:00〜17:00
- 休市日: 日曜・祝日と、多くの水曜。行く前に市場開場日カレンダーの確認を
- せり見学デッキ: 抽選制。5:30集合、5:45〜6:25見学、無料
- 見学者通路: 申込不要・無料。5:30〜6:30はせりの音声中継あり
- 入場料: 全体を通して無料
そのあと
6時半には終わってしまい、朝がまるごと残ります。答えはたいてい朝ごはんで、市場の飲食店エリアは早くから開いています。豊洲市場でどこで何を食べるか、そして避けたほうがいいもの は別記事にまとめました。
動き続けたいなら、チームラボプラネッツ が新豊洲でひと駅。朝一番の回がいちばん空いています。
注記:受付期間・見学時間・休市日は変更されます。計画を立てる前に、抽選サイトと市場のカレンダーで最新の情報をご確認ください。
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