蔵造りを一棟ずつ読む本:『川越の建物 蔵造り編』
蔵造りの通りを歩いていると、だんだん困ってきます。どの建物も黒くて重くて立派で、そして——どれも同じに見えてくるのです。
一棟ずつに名前があって、建った年があって、火事をくぐった話があるはずなのに、通りすがりでは分かりません。看板もほとんど出ていません。
その「分からなさ」を、まるごと引き受けてくれる本があります。
『川越の建物 蔵造り編』
『川越の建物 蔵造り編』(『川越の建物』編集委員会 編著/仙波書房)。2022年9月30日発行、A5判・158ページ・4色刷、価格は2,200円(税込)です。
「川越の建物」シリーズの第2弾で、第1弾は『近代建築編』。この蔵造り編では、川越の蔵造り(店蔵=見世蔵)を18箇所取り上げています。
中身が、ちょうどいい
一棟につき、こういう構成です。
- 概要と歴史 — いつ建ったのか、誰の店だったのか
- 特徴の説明 — 屋根、鬼瓦、観音開きの扉、看板建築との違い
- 過去の画像との比較 — 同じ建物の、昔の写真と今の写真を並べてある
この昔と今を並べるというのが、いちばん効きます。今そこに立っている建物が、100年前にも同じ場所に立っていた——それが写真で確認できると、通りの見え方が変わります。
イラストも多く収録されていて、これはアニメ制作会社 feel.(フィール)の協力によるもの。版元は「実際に見に行きたくなるイラスト」と説明しています。
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作っているのは、ひとりの人です
この本を面白くしているのは、版元の仙波書房そのものかもしれません。
東京新聞の取材によれば、代表の神谷利一さんは川越市仙波町の出身で、取材撮影・執筆・営業・経理まですべて自分でこなす「ひとり出版社」。かつて郵便局に勤めていたころには、町並みに合うポストを新しく設けたこともある人だそうです。
アニメ画を使った理由についても、こう語っています。
「澄み切った青空や建物の陰影の表現は、アニメ画でこそ実現できた」
そして、こうも。
「この本を手に川越観光をしてもらえたらうれしい」
ガイドブックの体裁をしていながら、大手の出版社が作ったものではない。その土地の人が、その土地の建物を、自分で調べて書いた本です。棚に並ぶ観光ガイドとは、手ざわりが違います。
お土産として、よくできている理由
- A5判で薄い — スーツケースの隙間に入ります。158ページなので重くもありません
- 日本の外ではまず手に入らない — ひとり出版社の本です。海外の書店に並ぶことはありません
- 歩いたあとに効く — 帰ってから開くと、「あれはこの建物だったのか」と分かります
- 2,200円 — 川越で食べるうなぎより、たぶん安いです
ひとつだけ、正直なところ
本文は日本語のみです。 英語の解説はありません。
ただ、この本は写真とイラストが主役なので、日本語が読めなくても「昔と今の比較」は伝わります。日本語を勉強している方や、建物そのものを見たい方には十分に楽しめる一冊です。日本語を読まない方への贈り物としては、そこだけご承知おきください。
価格と買える場所
ISBNは 978-4-910500-01-0。川越の書店や観光施設でも扱われています。現地で買えれば、それがいちばん気持ちのいい買い方だと思います。
滞在先のホテルへ届ける方法
Amazon Japanや楽天から、あなたの滞在する東京のホテルへ直接商品を届けられます。帰国の数日前に注文して、フロントで受け取るのがおすすめ。注文時の配送先にはホテルの住所とホテル名、予約と同じ宿泊者名を入力してください。
- 事前に滞在ホテルに確認してください(宿泊者宛の荷物の受け取り可否)
- Amazon.co.jpの英語表示切替は画面の右上にあります。楽天市場は日本語のサイトなので、読みにくい場合はブラウザの翻訳機能をお使いください
いつ開くか
正直に言うと、行く前より、帰ってからのほうが効きます。
行く前に読むと18棟を探して回ることになって、それは少し忙しい。先に何も知らずに歩いて、「黒くて重い建物がたくさんあったな」という記憶を作ってから開く。すると、その記憶のひとつひとつに名前がついていきます。
こんな人におすすめ
川越を歩いて、建物が思ったより面白かった方に。それから、古い町並みを「見る」だけでなく「読む」ようになりたい方に。18棟ぶんの読み方が身につくと、川越以外の町でも同じように見られるようになります。
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