館長が編んだ一冊:『岡本藝術』岡本太郎の仕事
青山の岡本太郎記念館には、ひとつだけ困ったところがあります。建物が小さいのです。一時間もあれば、ひととおり見終わってしまう。
それなのに、出てくるころには六十年ぶんの仕事をした人のことが気になっている。あの家が見せてくれるのは、その片隅だけです。
ショップには、そこへの答えがきちんと置いてあります。
なぜ、この一冊なのか
『岡本藝術』。小学館クリエイティブから、2015年3月3日に出ています。
この本を選ぶ理由は、編んだ人にあります。編著者の平野暁臣さんは、岡本太郎記念館の館長その人です。解説を頼まれた外部の評論家ではありません。いま歩いてきたあの家を預かっている人であり、岡本太郎の仕事を世に出すことを職業にしてきた人です。
つまりこれは、「たまたま記念館で売られている概説書」ではありません。館長自身が、太郎の仕事とは何だったのかを、順を追って並べてみせた本です。あの家がおもしろかったのなら、次に開くものとして、これほど自然な一冊もありません。同じ声のまま、はるかに広い場所へ連れていってくれます。
中身
収録は約400点。年代順に並んでいます。1930年代のパリ時代から、1996年に亡くなるまで。
範囲は、思っているより広いはずです。太郎という人が、ひとつの枠に収まることを拒んだからです。
- 絵画 — 戦前のパリ時代を含めて
- 彫刻 — 記念館の庭で、あいだに立って眺めたあの白い群像も
- 雑誌の表紙絵 — かなりの数を手がけています
- プロダクト、公共のためのデザイン — 記念碑だけでなく、日用品をつくっていた側面
年代順であることの効きめは、読んでいくとわかります。作品が変わっていく様子が、そのまま追える。 青山のひと部屋では、これは見られません。
英訳が併記されています
版元は、作品名と解説文を英訳し、和文に付記すると明記しています(「作品名、解説文を英訳し、和文に付記します」)。日本の美術書としては珍しいことです。
そのため、海外の方への贈り物として、かなり具体的に「使える」一冊になっています。日本の美術書は贈っても眺めるだけで終わることが多いのですが、これは作品名と解説が読めます。岡本太郎は、海外では名前を知られていません。相手にとっては、まったく新しい一人の作家との出会いになります。
なお、英訳が付くのは作品名と解説文です。読み物としてのエッセイまで全編が対訳になっているわけではない点は、贈るときに一言添えておくと親切かもしれません。
ひとつだけ、実用的な注意
軽い本ではありません。 A4判・208ページ。しっかりした美術書の重さがあります。
旅行者の方に持ち帰っていただくお土産としてご紹介していますが、この一冊だけは、荷物の重量を先に確認してからのほうが安全です。旅の初日に買うと二週間持ち歩くことになりますし、最後の日に買うなら預け荷物の残りを見てから。重さに見合う本ですが、重いことは重いのです。
価格と買える場所
執筆時点で3,190円(税込)。ISBN 9784778036058。
記念館のショップのほか、大きな書店の美術書の棚でも見つかります。新宿の紀伊國屋書店、丸の内の丸善など。記念館の品ぞろえはショップでしか買えないものがほとんどですが、この本はそうではありません。
滞在先のホテルへ届ける方法
Amazon Japanや楽天から、滞在中のホテルへ直接届けられます。帰国の数日前に注文して、フロントで受け取るのがおすすめです。配送先にはホテルの住所とホテル名、予約と同じ宿泊者名を入れてください。
- 事前に滞在ホテルに確認してください(宿泊者宛の荷物を受け取ってもらえるか)
- Amazon.co.jpの英語表示切替は画面の右上にあります。楽天市場は日本語のサイトなので、読みにくい場合はブラウザの翻訳機能をお使いください
この本が生まれた場所
表参道のフラッグシップ店の一本裏に、岡本太郎が42年暮らし、制作した小さな家があります。この本は、その家の突き当たりに置かれています。
まだ行っていないのなら、先に家へ。本はそのあとで。家を見ておくと、この本の意味が変わります。
こんな人におすすめ
あの小さな家から出てきて、少し揺さぶられたまま「もっと見たい」と思った方に。あるいは、二十世紀の美術が好きなのに岡本太郎という名前を聞いたことがない海外のご友人へ。作品名が英語で読めるぶん、贈られた側がちゃんと使えます。
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