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新宿の地下は、もうひとつの新宿だった
東京

新宿の地下は、もうひとつの新宿だった

新宿駅は、ギネス世界記録に世界一利用者の多い駅として認定されています。2022年の1日平均で2,704,703人。複数の鉄道会社の合計です。

その人数のほとんどは、地上の改札の外で体感されます。けれど新宿という街のかなりの部分は、そもそも地上にありません。

駅の下に、そして駅から何方向にも伸びて、もうひとつの新宿があります。明るい通路と、コンコースと、商店街。歩いてみると、思っているよりずっと遠くまで続いています。梅雨のじめじめした午後や、8月の息が詰まるような日には、こちらのほうが快適な新宿です。冷房が効いていて、濡れず、食事も買い物もできて、かなりの距離を空を見ずに移動できます。

緑の葉で覆われた天井の下を、買い物客が歩く新宿サブナードの通り

正直に書くと、この記事を書いている理由はひとつです。私はよく地下を歩きますが、外国から来た観光客をほとんど見かけません。 東京が得意なことのひとつなのに、もったいないと思っています。

アリの巣を、絵にしてみた

だいたいの形は、こんな感じです。いくつかのホール、枝分かれする通路、中央のコンコース、さらに下の階、そして四方の広場へ上がる階段。

「SHINJUKU UNDERGROUND CONCEPT MAP / NOT FOR NAVIGATION」と書かれた、空想の地下街を描いたイラストマップ

この地図で歩かないでください。 これは「アリの巣みたいだ」という感じを伝えるために作らせたイラストで、絵の中にも「NOT FOR NAVIGATION(案内用ではありません)」と入れてあります。実測ではありませんし、ホールの名前も出口も、実在のものとは対応していません。本物の地図は、コンコースのあちこちに立っている案内板と、各鉄道会社の構内図です。

それでも載せたのは、この「感じ」こそが伝わりにくい部分だからです。ここに住んでいる人間も、地下では時々方角を見失います。 私も定期的に迷います。注意力の問題ではありません。70年かけて、別々の事業者が、少しずつ継ぎ足してきた構造物なのですから、分かりにくいのは当たり前なのです。

そう思ってしまえば、地下はぐっと歩きやすくなります。

サブナードなら、覚えられる

いちばん取っつきやすいのが、新宿サブナード。歌舞伎町側、靖国通りの地下を走っています。

開業は1973年(昭和48年)9月15日。地下1階が商店街で、80店以上。地下2階は駐車場です。運営は新宿サブナード株式会社(三越伊勢丹ホールディングスの持分法適用会社)。駅の通路というより、百貨店を横に引き伸ばしたような雰囲気なのは、そのためかもしれません。

「SUBNADE 北通り」の看板。左に「出口7 歌舞伎町方面」、メトロ通路・JR線・小田急線・京王線への矢印が並ぶ

中は3本の通りでできています。北通り南通り緑の通り。その間に、サンデッキ広場やジャングルスカイ広場といった広場があり、地上へ上がる階段には1〜22の番号が振られています。

この3つの通り名を覚えるだけで、サブナードの中はだいたい解決します。看板の「北通り」は、いま自分が立っている列のことであって、どこか別の地区の名前ではありません。

北の端は西武新宿駅に直結。南と東は、JR・小田急・京王・丸ノ内線のコンコースへ、さらに先は新宿三丁目へつながります。つまりサブナードは、西武新宿駅とその他すべてをつなぐ地下の橋なのです。

案内看板の読み方

ここがいちばん実用的な部分です。これを知っているかどうかで、地下街は「怖い場所」から「使える場所」に変わります。

頭上の案内看板は青地に白文字。表記は日本語・英語・中国語・韓国語の4か国語です。飾りではなく、システムになっています。

西武新宿駅、青梅街道・西新宿・大江戸線新宿西口駅などを4か国語で示す、頭上の青い案内看板

覚えることは3つ。

1つめ。看板は「場所」ではなく「出口」を指しています。 地下では、「伊勢丹」も「新宿区役所」も、「東口」と同じ意味の方向表示です。お店を探すときは、店名より先に出口番号を見つけてください。

2つめ。コンコースは色分けされていて、色は最後まで一貫しています。 東口は青、南口は赤。どの看板でも同じ色です。行き先のコンコースをひとつ決めてしまえば、あとは数百メートル、その色だけを追えば着きます。文字を読む必要すらありません。

「SUBNADE 南通り」の看板。丸ノ内線・JR線・小田急線・京王線と、東口・南口の案内が並ぶ

3つめ。路線ロゴが、言葉のできない仕事をしてくれます。 JRは緑の四角、小田急は青い鳥のマーク、京王はKOのピンクの丸、丸ノ内線はMの赤い丸。自分の乗る路線のロゴさえ分かっていれば、4か国語のどれも読まずにこの地下を移動できます。海外の方を案内するときは、行き先の駅名よりロゴの色と形を伝えたほうが早い、というのが実感です。

地下通路の交差点で、天井から吊るされた青い案内看板

そして本格的に分からなくなったら、フロアガイドの案内板を探してください。コンコース沿いに一定間隔で立っていて、赤い「現在地」、番号の振られた全店舗、そして接続する駅の一覧が載っています。

新宿サブナードのB1フロアガイド。店舗配置、B2駐車場、接続する各駅が示されている

地下だけで、どこまで行けるか

ここが本題です。天気の悪い日に地元の人間が地下を使うのは、これが理由です。

JR新宿駅の改札から、地下通路だけで行けるのは——

  • 西武新宿駅(サブナードの北端)
  • 新宿三丁目駅(東京メトロ丸ノ内線・副都心線、都営新宿線)。1959年(昭和34年)3月14日に開通したメトロプロムナードという通路を通ります
  • 新宿西口駅(都営大江戸線)
  • 伊勢丹(東口側)
  • 新宿区役所(歌舞伎町側)
  • そして西口側の高層ビル街と、東京都庁。無料の展望室があるあの建物です。都庁の公式案内では、JR新宿駅西口から徒歩約10分とされています

「SUBNADE 北通り 新宿区役所方面」の看板の下に続く、静かな地下の商店街

ただし、あてにする前に2つだけ。

地下はひと続きのショッピングモールではありません。いくつもの系統が接しているだけで、つなぎ目には素っ気ない連絡通路や短い階段があり、西口側には工事で迂回になっている区間もあります。新宿駅は長期の再開発の途中で、通路は実際に閉じたり移ったりします。この記事と目の前の看板が食い違ったら、看板を信じてください。

もうひとつ。通路は駅の時間で動きますが、店は店の時間で閉まります。サブナードの館内表示では、ショップがおおむね10:30〜21:00、レストランが11:00〜22:00。ただし表示自体に「一部の店舗では異なります」と書かれていますし、掲載サイトによっては10:00〜21:00/11:00〜23:00と案内しているところもあります。時間を前提に予定を組むなら、公式サイトで確認してください。

閉店後はシャッターが下り、明るかった商店街が、長い空っぽの廊下になります。危ない場所ではありません。ただ、同じ場所ではなくなります。

ひとつだけ、お願い

地下で人に迷惑をかける方法は、実質これしかない、という話です。

この通路は、誰かの通勤路です。朝8〜9時と夕方17〜20時、コンコースには、ものすごい人数が両方向に速い速度で流れています。

ですから——止まる前に、端に寄る。 通路の真ん中でスマホを見て立ち止まらない。流れの中で写真の構図を決めない(撮るなら端から、あるいは同じ通路が半分空になるお昼どきに出直す)。スーツケースは、後ろに引くより前に押す。そして現在地を確かめたいときは、案内板の前でどうぞ。みんなそこでやっています。

誰かに叱られる類のことではありません。ただ、「訪問者」でいられるか「障害物」になるかの差は、だいたいここにあります。

立ち止まる価値のあるもの

ガチャガチャの壁。 サブナードには、両側の壁ぎっしりに、何段も積み上がったカプセルトイの店があります。1回300〜500円。硬貨のみで、壁に両替機がついています。

何段も積み上がったカプセルトイの機械が、店の奥まで途切れずに並ぶ

無料Wi-Fi。 サブナードには公衆無線LANがあります。案内板に SUBNADE_Free_Wi-Fi と出ています。電波が入りにくい地下では、思っているより効きます。

両替所。 銀行でも空港でもない商店街の中に外貨両替所がある、というのは案外めずらしいことです。海外から来た方を案内するときに使えます。

駐車場が意外と安い。 地下2階の駐車場は24時間営業・年中無休・400台。同じ館内の1店舗で3,000円以上買い物か飲食をすると、1時間分が無料になります。条件つき・対象店舗ありなので、会計のときに聞いてみてください。

緑の天井。 中央付近の天井は、照明を仕込んだ葉のかたまりで覆われています。造花です。そこは正直に書きます。それでもサブナードでいちばん写真を撮られている場所ですし、灰色の雨の日に、地下の廊下がやけに機嫌よく見えるのは事実です。

雨の夜に、地下でできること

予定が雨で潰れた日に、地下から出ないまま成立する選択肢がひとつあります。

新宿NINJA -LIVE SHOW- は、歌舞伎町の第二東亜会館B1——サブナードの出口7(歌舞伎町方面)から1分ほどの地下でやっています。2024年オープン、上演約80分。ジャパン忍者協議会と、歌舞伎師範・田中傳次郎の監修です。

この記事とつながる話をひとつ。頭上の案内看板と同じで、このショーも言葉が要らないように作られています。追うべき台詞がありません。代わりに運ぶのは、和太鼓、歌舞伎の型を借りた殺陣、日本舞踊、そして壁に投げられる映像です。客席が狭いので、演者の顔が見えます。

途中に観客参加の忍者体験が入り、後半はかなり本気で参加を求められます。舞台に呼ばれたくない方は、後ろの席を選んでください。

正直なところをひとつ。料金は7,000円〜。80分と考えると、気軽な額ではありません。買っているのは規模ではなく、狭い部屋と、ちゃんとやっている演者のほうです。

新宿を、持ち帰る

新宿らしいものをひとつだけ、と言われたら、私はこれを挙げます。しかも安い。

新宿中村屋は1909年から新宿の交差点に店を構え、日本のレストランに本格インドカリーを持ち込んだ店です。新宿カリーあられは、その昭和2年から本店に伝わるカリースパイスを、ふんわり焼いたあられにまぶしたもの。食べ切りサイズの小袋入りです。

軽くて、スーツケースの中で場所を取りません。中村屋の商品ページによれば、12袋入で120g(10g×12袋)、賞味期限90日。原材料に乳成分・大豆・鶏肉を含みます。

買う前にひとつ。 Amazonにも楽天にも出ているのは14袋入ですが、中村屋の公式オンラインショップに載っているのは8袋入と12袋入だけです。14袋入は販売店舗限定の規格らしく、メーカーの商品ページには内容量の記載が見つかりませんでした。グラム数を正確に知りたい場合は、公式の8袋入・12袋入を選んでください。

→ このお菓子については、別記事でもう少し詳しく書きました。

行き方

新宿駅ならどの改札でも構いません。要は、外へ出ずに下へ降りること。サブナードに直接入るなら、JR新宿駅の東口丸ノ内線のコンコース、または西武新宿駅の地下連絡口が近道です。

基本情報

  • エリア: 新宿駅の地下コンコースと、そこから伸びる地下街/新宿サブナードは靖国通りの地下・歌舞伎町1丁目
  • 最寄り駅: 新宿(JR・小田急・京王・東京メトロ・都営)/西武新宿/新宿三丁目/新宿西口
  • サブナード開業: 1973年9月15日/地下1階に80店以上
  • サブナードの営業時間: ショップ おおむね10:30〜21:00、レストラン 11:00〜22:00(店舗により異なる)
  • 無料Wi-Fi: SUBNADE_Free_Wi-Fi
  • 駐車場: 地下2階・24時間・年中無休・400台/対象店舗で3,000円以上の利用で1時間無料
  • 都庁まで: JR新宿駅西口から徒歩約10分(ほぼ地下)
  • 費用: 買い物をしなければ無料
  • 所要: ぶらぶらして1時間。雨の午後をまるごと使うこともできます

こんな方へ

雨で予定が流れた方へ。地上を歩くのが苦行になる7〜8月に東京にいる方へ。案内サインや、インフラそのものが好きな方へ。そして——地元の人が使っていて、観光客はその上を歩いて通り過ぎていく場所、という手触りが好きな方へ。

海外から友人が来たときの「雨の日の予備プラン」としても、けっこう強いカードです。

注記:通路・店舗の営業時間・価格・接続は変わることがあります。新宿駅は長期の再開発中で、通路の閉鎖や変更もあります。実際に歩く前に、最新情報と、目の前の案内看板をご確認ください。

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