グリーン車:ふつうの通勤電車に、2階建ての一等車がついている
東京の近郊を走る、なんの変哲もない通勤電車。ロングシートで、吊り革が並んでいて、朝は身動きが取れない、あの電車です。
その10両編成のうち、2両だけ、まったく違う車両がつながっています。2階建てで、席は前を向いていて、テーブルがあり、空いています。
これがグリーン車です。追加料金を払えば、誰でも乗れます。

まず、これが何なのかという話
日本の鉄道に慣れていない方には、この仕組みは少し奇妙に見えると思います。
有料の座席がほしければ特急に乗る、というのが多くの国のやり方です。ところが首都圏のJRでは、普通列車と快速列車そのものに、一等車にあたる車両が2両だけつながっています。同じ電車の、同じドアの並びの中に、追加料金の区画がある。
乗れる路線は、東海道線、横須賀線、総武快速線、宇都宮線、高崎線、常磐線、湘南新宿ライン、上野東京ライン、そして中央快速線・青梅線です。
特別なのは、この2点です。
- 2階建て。上の階は視線が高く、屋根の上や川の向こうまで見えます。下の階は揺れが少なく、地面に近い、独特の眺めになります。車端には平屋の席もあり、こちらは個室のように落ち着きます
- 全席自由席。指定席ではありません。空いている席に座ります
料金
料金は距離で決まり、そして——ここが大事なのですが——買い方でも変わります。
| 距離 | Suica等で買う | 紙のきっぷ・車内で買う |
|---|---|---|
| 50kmまで | 750円 | 1,010円 |
| 100kmまで | 1,000円 | 1,260円 |
| 101km以上 | 1,550円 | 1,810円 |
これは乗車券とは別にかかる料金です。乗車券は、グリーン車に乗らない場合と同じものを使います。
Suicaで買うと、どの区分でも260円安くなります。乗ってから車内で買うと高いほうの値段になるので、乗る前に買ってください。
買い方は3つあります
1. ホームの緑の券売機(いちばん多い)
グリーン車がある路線のホームには、緑色の「Suica グリーン券専用」の券売機が立っています。四つ葉のような緑のマークが目印です。

これがいちばん手軽なのですが、外国から来た方がつまずきやすい点が2つあります。機械の上に、そのまま書いてあります。

ひとつ、「モバイルSuicaはご利用できません」。 スマートフォンのSuica(Apple PayやGoogle ウォレットに入れたもの)は、この券売機では使えません。カード式のICカード——プラスチックのSuica、PASMO、Kitaca、TOICAなど——が必要です。
ふたつ、「チャージのみのご利用はできません」。 この機械は現金を入れて残高を足すためのものではありません。グリーン券の代金は、置いたカードの残高から引かれます。ですから、先に残高を確認しておいてください。
画面にはEnglish / 简体中文 / 繁體中文 / 한국어の切り替えがあります。日本語が読めなくても操作できます。
画面に書かれている、そのほかの注意も大事です。
- 1枚のSuicaに、複数のグリーン券は買えません。 2人で乗るなら、ICカードが2枚必要です。ここは家族連れがいちばん困るところです
- グリーン券は発売当日1回限り有効です
- 全席自由席。満席で座れなくても、グリーン券は必要です
2. モバイルSuica(スマートフォンだけで完結する)
モバイルSuicaを使っているなら、アプリの中でグリーン券が買えます。券売機では使えないのに、アプリでは買える——ややこしいのですが、そういう仕組みです。
アプリで買っておけば、あとは乗って、好きな席に座って、天井のセンサーにスマートフォンをかざすだけです。
3. 改札の外の、ふつうの券売機や窓口(紙のきっぷ)
ICカードを持っていない場合は、改札の外にあるふつうの券売機や、みどりの窓口で紙のグリーン券を買えます。現金で買えるのはこの方法です。ただし料金は高いほうになります。
すでに改札の中にいるなら、駅員さんに「グリーン券を買うので、一度出ます」と伝えてから出てください。
紙のきっぷで乗る場合、天井のセンサーは使えません。 センサーはICカードを読むためのものだからです。席の上のランプは赤いままになりますが、それで正しいのです。車内改札に来た車掌さんにきっぷを見せてください。
座ったら、天井にタッチする
ここが、この仕組みでいちばん独特なところです。
ICカードでグリーン券を買った場合、改札のようにどこかを通る必要はありません。 券の情報はカードの中に書き込まれています。
やることは、こうです。
- グリーン車に乗る
- 空いている席に座る(座ってから、で構いません)
- 座席の真上にあるカードリーダーに、カードかスマートフォンをタッチする
- ランプが赤から緑に変わる

赤は「空席」、緑は「この席の人は支払い済み」という合図です。これで車掌さんが、通路を歩くだけで確認できます。
席を移ったら、移った先でもう一度タッチしてください。 元の席のランプは、しばらくすると戻ります。
正直なところ
1,550円払う価値があるかどうかは、乗る時間によります。
- 払う価値がある: 1時間以上乗るとき/大きな荷物があるとき/金曜の夜や休日の夕方(普通車が混む時間)/宇都宮・高崎・小田原のような、遠くまで行くとき
- もったいない: 20分の移動/平日の昼間で、普通車がそもそも空いているとき
混む日は、グリーン車も混みます。 全席自由席なので、満席なら立つことになります。それでも料金は返ってきません。連休の夕方などは、始発駅から乗るか、時間をずらしてください。
車内販売はありません。 飲み物は乗る前に買っておくのがおすすめです。
この記事の写真の電車について
冒頭の写真は湘南新宿ラインの快速です。この電車に乗れば、新宿から乗り換えなしで、北は宇都宮・高崎、南は横浜・小田原・逗子まで行けます。
グリーン車をいちばん実感できるのは、こういう長い距離を走る列車です。たとえば東京から宇都宮までは109.5km、約2時間。乗車券2,090円にグリーン券1,550円を足しても3,640円で、新幹線より1,000円ほど安く、そのぶん時間はかかりますが、ずっと座っていられます。
→ その2時間の先にある街の話は、宇都宮の日帰り記事に書きました。
基本情報
- 乗れる列車: 東海道線/横須賀線/総武快速線/宇都宮線/高崎線/常磐線/湘南新宿ライン/上野東京ライン/中央快速線・青梅線の普通・快速列車
- 位置: 10両編成なら4号車・5号車(2両)
- 料金(乗車券とは別): 50kmまで750円/100kmまで1,000円/101km以上1,550円(いずれもSuica等で事前に購入した場合)
- 紙のきっぷ・車内購入: それぞれ1,010円/1,260円/1,810円
- 席: 全席自由席・2階建て
- 買う場所: ホームの緑の券売機(カード式ICカードのみ)/モバイルSuicaアプリ/改札外の券売機・みどりの窓口(紙)
- 乗ったら: 座席の天井のリーダーにタッチ(赤→緑)。紙のきっぷは車掌に提示
窓の外を通り過ぎるもの
2階の席に座っていると、視線が高いぶん、貨物列車がよく見えます。東海道線でも宇都宮線でも、隣の線路を、四角いコンテナを積んだ長い列車が走っていきます。
あの四角い箱には、ちゃんと形式名があります。そして、その形をした収納ボックスが売られています。
こんな方へ
移動そのものを、旅程の一部にしたい方へ。 日本の鉄道は「速く着くこと」だけを競っているわけではありません。ふつうの通勤電車に2階建ての一等車をつないでしまう発想は、その良い例だと思います。
そして、大きなスーツケースを持って1時間以上乗る方へ。 ここは迷わず750円を払ってください。
注記:料金・対象路線は変わることがあります。ご乗車前にJR東日本の公式情報をご確認ください。
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