湯の花:家の湯船に、本物の温泉成分を
「おうちで温泉気分」をうたう商品の多くは、香料と着色料でできています。これは、そうではありません。
湯の花(ゆのはな)は、温泉の噴気が残していく鉱物の結晶です。そして大分・別府では、今も昔ながらのやり方で「採れて」います。噴気の吹き出す地面の上に、低い茅葺きの小屋を建てて。ひと袋を湯船に落とすと、お湯は白く濁り、硫黄が香り、まぎれもなく温泉の湯になります。
平たく、軽く、割れない。お土産としては実によくできています。ただし、条件があります。 そこを曖昧にして薦めたくないので、先にお伝えします。
そもそも、何なのか
別府の山の手、明礬(みょうばん)温泉では、地面から絶えず蒸気が上がっています。三百年ほど前、そこに暮らす人々は、噴気の上に小屋を建て、中に特別な青粘土を敷き、蒸気をゆっくりと通す方法を編み出しました。すると数週間かけて、蒸気の中の成分が表面に結晶していく。それを手で掻き取ったものが、湯の花です。
作っている、というより、蒸気が仕事をする場所を人が用意している、という感じの製法です。
2006年(平成18年)3月、この製造技術は国の重要無形民俗文化財に指定されました。祭りや伝統工芸と同じ枠組みでの保護です。そんなラベルの付いた入浴剤は、世界にもそう多くないはずです。
成分は主に硫酸アルミニウムと硫酸マグネシウム、そして鉄の化合物。日本では医薬部外品として、神経痛・肩こり・冷え性といった温泉らしい効能で販売されています。
買う前に、読んでください
ここがいちばん大事なところです。メーカーの案内をもとにまとめます。
- 追い焚き機能付きのお風呂 — メーカーは「あまりお勧めできません」としています。案内では、追い焚きをせず、沸かしたお湯に使うようにとされています。追い焚きは湯船のお湯を給湯器に通して温め直す仕組みなので、この成分とは相性がよくありません。
- 循環式のお風呂 — 「使用年数によって不具合が生じる場合がある」「定期的な清掃・メンテナンスが必要」とされています。ご自宅のお風呂が循環式なら、よく考えてから。
- ジャグジー・24時間風呂 — メーカーの明記はありませんが、ポンプやフィルターにお湯を通す仕組みである以上、同じ理屈が当てはまります。私は使いません。
- 浴槽に色が付きます。 硫黄と鉄が入っているのですから当然です。メーカー自身が漂白剤を使った着色の落とし方を案内しているほどです。入浴後は早めにお湯を落として、浴槽を洗ってください。
- 匂います。 しっかりと、硫黄と、少し鉄の匂いが。それこそが本物である証なのですが、ご家族には先に伝えておいたほうがいいかもしれません。
まとめると——単純な、循環しない湯船のためのものです。 そういうお風呂なら、これは素晴らしい。そうでないなら、香りの入浴剤のほうを選んでください。あちらは何も壊しませんが、こちらは壊す可能性があります。
買うなら
おすすめは、明礬の造り手である村上商会の公式品。15袋入りで、1袋が一般的な湯船1回分です。
温泉地に行くなら
湯の花は九州・別府のもの。東京からは遠い場所です。首都圏から日帰りで温泉に、ということなら、草津温泉が新宿から直行バスで行けます。あちらはあちらで、名高い強酸性のお湯です。
同じ「温泉」でも、泉質はまったく別のもの。湯の花は、そのうちのひとつを鞄に入れて持ち帰れる、というだけの話です。
こんな方へ
温泉に浸かって、「これを家でも」と思ったことのある方へ。湯船が単純な造りでさえあれば、店頭のどの商品よりも本物に近づけます。なぜなら、これは温泉を真似たものではなく——温泉を、乾かしたものだからです。
注記:ご使用の際は必ずパッケージの説明に従ってください。お風呂の仕組みに不安がある場合は、管理会社や大家さんにご確認を。価格・在庫は変わることがあります。
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