横浜 工場夜景ジャングルクルーズ:京浜の運河を90分
横浜の港は、たいてい陸から眺めるものです。観覧車、赤レンガ倉庫、水の上に長く伸びるベイブリッジ。きれいな景色ですし、絵はがきになっているのもこちらです。
ところが、もうひとつの横浜があります。日没に赤レンガ倉庫から小型の高速船に乗り、橋をくぐって南東へ——観光の港をすっかり抜けてしまうと、そこは京浜工業地帯の運河です。日本三大工業地帯のひとつ。両岸にプラントとタンクがびっしりと並び、下から照らされて浮かび上がります。白い蒸気が茶色い夜空へ立ちのぼり、遠くでフレアスタックが燃えている。
正直、映画のセットのように見えます。けれども、セットではありません。あのプラントは、いまこの瞬間も夜勤で動いています。

どんなクルーズか
乗ったのは「工場夜景ジャングルクルーズ」。運航は横浜のリザーブドクルーズ(株式会社ケーエムシーコーポレーション)です。
知っておくと面白い事実がひとつ。これは日本で最初の工場夜景クルーズです。夜景評論家の丸々もとお氏と同社社長の出会いから生まれた企画で、当時は周囲の誰もが「そんなものが成立するはずがない」という反応だったそうです。ところがふたを開けてみれば3か月先まで予約が取れない状態になり、いまでは全国10か所以上で工場夜景クルーズやツアーが走っています。その大元がこの船です。
第1回かながわ観光大賞を受賞し、日本夜景遺産と日本百名月の両方に認定されています。
「ジャングル」という名前は、宣伝文句ではありません。運河に入ると、稼働音が水面を伝わって動物の声のように聞こえ、独特の匂いが漂い、船の振動が足元から上がってきます。感覚としては、たしかにジャングルです。
コース
桟橋を出た船は赤レンガ倉庫とベイブリッジの外へ出て、そこから働く水路へ入ります。塩浜運河・田辺運河・南渡田運河——いずれも川崎側です——をめぐって戻ってきます。その間ずっと、ガイドが解説を続けます。あれは何のプラントか、何を作っているのか、なぜ隣の塔だけ暗いのか。
コース取りは意図的に緩急がついています。見どころはゆっくり、見どころの少ない区間は速く。しかも工場は、その日に動かす設備によって光り方が変わるため、乗務員が事前に水路を確認して順路を調整しています。ひと月ずらして乗った二人が、同じ景色を見るとは限りません。


帰りには大さん橋の前を通ります。大型客船が入っていれば、水面と同じ高さから見上げることになります。自分が乗っている船とは、まるで桁の違う大きさです。

ここは、働いている場所です
いちばんお伝えしたいのはここです。運河沿いのプラントは観光施設ではありませんし、私たちのために開かれているわけでもありません。製油所であり、ガス工場であり、化学プラントであり、夜通し動いていて、中では人が働いています。
- プラントに向けてフラッシュやライトを当てない。 暗い水面越しに光を向けられるのは、よくても迷惑です。
- デッキでは声を落とす。 夜の水面は、驚くほど遠くまで音を運びます。
- 撮るのは景色であって、門やゲートではない。 岸から見れば、レンズを並べた船は目立ちます。このクルーズが成立しているのは、これまで問題が起きていないからです。
運河をこうして通れているのは、誰も嫌がってこなかったからです。それは守る価値があります。
基本情報
- クルーズ名: 工場夜景ジャングルクルーズ(運航:リザーブドクルーズ/株式会社ケーエムシーコーポレーション)
- 乗下船: ピア赤レンガ桟橋(横浜赤レンガ倉庫の海側)
- 住所: 神奈川県横浜市中区新港1-1
- 最寄り駅: みなとみらい線 馬車道駅・日本大通り駅から徒歩約12分/JR桜木町駅から徒歩約20分
- 所要: 約90分
- 運航日: 週末・祝日限定
- 料金: 大人6,000円/小学生3,800円(税込)。未就学児は大人1名につき1名無料、2名以上は小学生料金
- 執筆時点の特典: 横浜銘菓「横濱ハーバー」付き。以前はドリンクでした。変わることがあるので、古い掲載ではなく予約ページで確認してください
- 予約: 事前予約制。空席があれば出航の約30分前から桟橋でも販売
出航時刻は季節で動きます
日没に合わせて出るため、月ごとに変わります。
| 月 | 出航 |
|---|---|
| 1月 | 17:00 |
| 2月 | 17:30 |
| 3・4月 | 18:00 |
| 5月 | 18:30 |
| 6・7月 | 19:00 |
| 8月 | 18:30 |
| 9月 | 18:00 |
| 10月 | 17:30 |
| 11・12月 | 17:00 |
日によって前後します。販売開始は希望月の前月1日前後です。予定を組む前に、運航日程のページで確認してください。
正直に書いておきたいこと
桟橋で気づくより、先に知っておいたほうがよいことです。
- 波しぶきがかかります。 見どころの間は船がそれなりに走ります。デッキに出るつもりなら、薄いレインウエアがあると安心です。
- 雨でも出ます。 夕刻からのクルーズの欠航判断は当日12時ごろ。欠航時は原則として日程振替のお願いになります。
- 自由席で、良い席はデッキです。 船内は移動自由。写真はすべて外から撮ることになりますが、夜の水上は同じ晩の陸より確実に寒いです。一枚多めに。
- 車いすは事前相談を。 乗ったままの乗船は可能ですが、車いすのサイズと当日の船によります。予約前に問い合わせてください。
- このクルーズに障がい者割引はありません(昼のカフェクルーズにはあります)。
- 週末は埋まります。 週末限定の人気コースです。
- 酔いやすい方は酔い止めを。 運河は穏やかですが、他船の引き波は届きます。船に酔い止めの用意はありません。
- 出航時刻に船は待ちません。 出航の10〜15分前までに桟橋へ。赤レンガ倉庫でイベントがあると桟橋が分かりにくくなります。
写真の撮り方
掲載した写真は、すべて暗い中の動いている船からです。条件としては最悪の組み合わせで、実際に効いたのは次のことでした。
- 外に出る。 窓越しに撮ると、自分と船内の照明が写り込みます。
- 手すりに「体を当てる」。手すりに載せない。 手すりはエンジンの振動を拾います。自分の体のほうが吸収してくれます。
- スマホのナイトモードは使う。ただし長く伸ばさない。 動くデッキでの長秒露光は、光の帯にしかなりません。
- 10枚に1枚残ればよいと思う。 それが普通ですし、だからこそ残った1枚に価値があります。

予約と、もう少しやさしい選択肢
ジャングルクルーズは楽天トラベルの観光体験から予約できます。
工業地帯を90分というのが少し重い、という晩には、同じ水域のきれいな側を回る船もあります。マリーンルージュとシーバスです。みなとみらいの高層ビル、観覧車、ライトアップされた赤レンガ倉庫、マリンタワー——ランチクルーズもディナークルーズも、短い移動だけの利用もできます。窓が大きく、船内は空調完備。2月の夜には、これは小さくない差です。
🔗 横浜マリーンルージュ/シーバスのクルーズチケット(Klook)
持ち帰るなら
桟橋に売店はありません。そして下船後にいちばん欲しくなるのは、たったいま見たものの続きです。日本にはそれ専門の出版のジャンルが小さく存在しています。写真集『工場夜景』に収められた写真は、川崎市が主催したフォトコンテストから選ばれたもの——つまり、いま船で通ってきたのと同じ運河です——に、全国4都市の工場夜景が加わっています。鑑賞スポットのマップ付きで、ガイドブックとしても使えます。
ただし2015年の本なので、アクセス情報には古くなっている箇所があります。中身と、持ち帰る価値があるかは別の記事に書きました。
一日にするなら
船は飲食店が閉まるずっと前に赤レンガ倉庫へ戻ります。中華街は徒歩15分ほど。東京から一日で組み立てるなら、同じ方角の鎌倉を昼に置くと、横浜の夜とちょうど噛み合います。
注:運航日・出航時刻・料金・特典はいずれも変わります。予定を立てる前に運航会社のページをご確認ください。
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